トラックの交通事故を考える

全日本トラック協会が、レポート「事業用貨物自動車の交通事故の傾向と事故事例」を発表しています。

これは、平成25年の事業用貨物自動車における事故統計を全日本トラック協会がまとめたもの。

 

とても良くできた統計レポートなので、運送事業に係る方のみならず、クルマを運転する人にはぜひ読んでいただきたいレポートです。

 

今回は、同レポートのデータを、交通事故全体の統計などと比較しながら、ポイントとなる部分をいくつかご紹介したいと思います。

◇トラックドライバーの年齢層別事故の状況

同レポート10ページには、このようにレポートされています。


大型、中型は30歳代から50歳代(12,267件)が多く発生し、全体の約66%を占めています。また、普通では40歳代(760件)で多く発生しています。


トラックドライバーの年齢構成比と事故発生件数をあててみました。

※年齢区別が一部異なる区切り方になっていることをご注意ください。

比較すると、事故の発生件数に関し、年齢別の偏りは見受けられません。

あえて言えば、40歳代の事故発生率がやや高いといったところでしょうか。

◇どんな事故が多いのか

同レポートの6ページには、このようにレポートされています。


事故が9,719件、出会い頭衝突事故が1,843件、右左折時衝突事故2,002件の準となっています。

特に、追突事故は自動車による交通事故全体の約39%であるにも拘らず、事業用トラックでは約53%と非常に高い構成率となっています。


一般ドライバーと比較し、トラックドライバーの起こす事故には、どんな事故が多いのかを比較していきます。

※全日本トラック協会の統計とは、やや値が異なる様子。

交通事故全体の統計によると、発生件数の多い事故ランキングは以下のとおり。

  1. 追突事故 (約36%)
  2. 出会い頭衝突事故
  3. その他の車両相互事故
  4. 右折時衝突事故
  5. 横断中の歩行者を被害者とする事故

一方、トラックによる事故のランキングは以下のとおり。

  1. 追突事故 (約54%)
  2. 出会い頭衝突事故
  3. その他の車両相互事故
  4. 左折時衝突事故
  5. 右折時衝突事故

なお、「その他の車両相互事故」とは、出会い頭、追突および追い抜き時、すれ違い時、左折時、右折時以外のシチュエーションでの事故となります。

 

同レポートのとおり、トラックの交通事故において、異常に追突事故が多いことが分かります。

◇交通事故が発生した速度と、死亡事故の関係

速度と死亡事故の関係について、同レポート(15ページ)では以下のように記載されています。


危険認知速度別の死亡事故件数をみると、60km/h以下帯が58件で最も多くなっています。また、死亡事故率をみると危険認知速度が高くなるにつれて死亡事故率が高くなっています。


交通事故全体での統計と比較しましょう。

交通事故全体での死亡事故の割合は、0.6%。

対して、トラックが起こした事故における死亡事故の割合は、1.9%となっています。

 

なお、交通事故全体をみると、死亡事故率が最も高いのは、80km/hを超えた事故となっています。これは、暴走運転による死亡事故が含まれているものと推測します。

また、交通事故全体をみると、速度域が上がるほど、死亡事故率はどんどん上がっていきますが、トラック事故の場合は、速度向上による極端な死亡率の上昇はなく、低速度帯から死亡事故率が高いことが分かります。

特に、速度10km/h以下帯の死亡事故率は、交通事故全体の6倍。

これは、左折巻き込み事故などに所以するのでしょう。

 

車両の大きさゆえ、事故を起こせば悲惨な死亡事故につながる可能性が高いことを、運送事業者は今一度自覚する必要があるかと存じます。 


最後にひとつ、とても興味深いデータをお見せしましょう。

 

◇トラックドライバーは高齢者の自転車乗りに厳しい?

自転車に乗った方が被害者となってしまった死亡事故に関する統計です。

 

交通事故全体では、自転車死亡事故全体における、24歳以下帯の構成比は、約40%。対して、トラックの場合、同年齢帯の構成比は、5.4%。

一方、60歳以上帯における、交通事故全体の構成比は、23.4%。トラックの場合、なんと64.4%もあります。

 

あまりに極端ですね。

子供には優しいトラックドライバーも、ご高齢の方々には、とても厳しいということでしょうか。


今回取り上げた「事業用貨物自動車の交通事故の傾向と事故事例」は、とてもよく出来たレポートです。

だからこそ、ただ読むだけではなく、もう少し深堀りすることにより、各データをさらに物流に関わる企業にとって、クルマの運行に関わる企業にとって、より有効な考察が生まれるものと考えます。


ぜひ、じっくりと腰を据えて目を通されることをお勧めします。

※参考

事故類型別統計 交通事故全体と、事業用貨物自動車(トラック)、事故件数と構成比の比較

※出典

※トラックドライバーの年齢別就業者数は、全日本トラック協会Webサイト、「トラック輸送産業基礎データのページ」から取得。

http://www.jta.or.jp/chosa/yusosangyo_data/kiso_data.html


※その他、交通事故全般の統計は、政府統計公開サイト「e-stat」から取得。

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001117549


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